研究紹介

1. テラヘルツレーザー (淺川G)

Cherenkov-13

周波数が0.1~10THzの光を発生する装置を開発しています。この周波数領域の光はバイオサイエンスや分子物理の分野で大変重要であることがわかっているのですが、現在は非常に低出力の光原しかなく、新しい高性能光源の開発が望まれています。
 当研究室では光速近くまで加速した電子により光を発生させる方式のテラヘルツ光源を開発しています。この方法には、光の周波数を自在に調整できること、強い光が発生できること、の2つの利点があります。原理的には
1:チェレンコフ放射現象 さらに詳しく 2:スミス・パーセル放射現象
という物理現象を利用した2つのアプローチを採っています。電磁気学、解析力学、相対論を主体とし、光が増幅される物理過程を実験結果と理論計算を突き合わせ明らかにします。まだまだ原理実証レベルの研究ですが、将来的には実用機開発につなげたいです.

関西大学大学院HP 修了生の声: 吉田裕哉君 詳細

2. 超短パルス電子ビームの物理 (淺川G)

shapeimage_2

パルス幅10fsec(光がたったの3μmしか進めないほどの短い時間)という超短パルス電子ビームが引き起こす特殊な物理現象を調べます。調査項目は
 1:超短パルス電子ビームの発生と加速
 2:超短パルス電子ビームで光を発生させる
の2つに大別できます。 超短パルス電子ビームはチタン・サファイアレーザー光を金属に照射し、光電効果を利用して発生させます。 超短パルス電子ビームは位相のそろった強力な光を発生することが知られています。この光ができる仕組みや、光を出した後の電子の状態などを調べます。量子力学、統計力学、電磁気学、相対論など物理学の広い分野に関連した研究です。現段階では実験も行いますが、理論的な研究が占める割合が高いです。光源としての利用もさることながら、将来的にはこの研究の成果が素粒子物理実験に利用されればと期待しています。まだ研究を始めたばかりです。誰か早く実験装置を完成させてください。

学びのスタイル: 自作の装置を使って「光を作る」研究に挑んでます。山本寛子さん 詳細
学びのスタイル: 理論と実験を通じて量子物理に挑戦。竹村実成君 詳細 学会賞受賞
電気学会 A部門長賞〔平成25年度 〕「フェムト秒バンチのパルス幅伸長」川人大希君 PDF



3. 固体燃料ロケット推進薬のX線CT分析 (山口G)

3Dviewer2

AP/HTPB系コンポジット推進薬における粒子分散の統計的分析

コンポジット推進薬における酸化剤や軽金属燃料の粒子分散をX線CTで統計的に分析します。蠕動運動ミキサーによる推進薬スラリの連続捏和プロセスにおいて、粒子分散の定量的評価を必要としています。X線CT画像内の輝度と画素数を集計した輝度ヒストグラムは、粒子分散に従ってその分布曲線を変化させる。推進薬の原料配合比率から理想曲線を算出し、実測曲線との差違から粒子分散を統計的に定量評価します。

AP/HTPB系コンポジット推進薬における粒子間結合モデル

コンポジッド推進薬において粒子間結合の微細な観点から粒子分散を理解し, X線CTで粒子分散を直接測定する方法を検討しています。捏和過程による粒子分散の最終理想形は、どのような空間スケールを選択しても粒子分散が一様となることです。粒子間結合の特性に合わせた捏和運動の最適化によって粒子分散を自発的制御し、固体推進薬のさらに優れた燃焼特性を得ることで、ロケットモータの正確な推力設計に繋げます。

推進薬のX線CT測定の際は, 関西大学電気化学研究室(石川・山縣先生,イノベーション創生センター),
JAXA宇宙科学研究所(相模原), JAXA調布航空宇宙センター(三鷹)等で年数回実験します。

学部3年次秋から研究着手しますので, 3年次冬の宇宙輸送シンポジウム(JAXA宇宙研)や応用物理学会, 4年次夏の宇宙科学技術連合講演会,等にて担当学部生が学会発表します。院生はISTS等の国際会議で学会発表, 論文投稿(英語,査読付)をします。 卒業生進路は主に宇宙分野・重工業・電機, 等です。

宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所(JAXA/ISAS), 中央大学 共同研究 (2015~) 詳細
山縣雅紀准教授 & 山本博文研究員 (化学生命工学部 電気化学研究室) nano3DX 研究協力

4. 医療マイクロ波CTの研究開発 (山口G)

waveCT

 マイクロ波を使った計算機トモグラフィー法による乳がん早期診断法の研究開発が現在進められています。欧米では乳がん検診の高い受診率によって乳がん死亡率が抑制されていますが, 日本では受診率が低いため乳がん罹患率・死亡率の増加が続いています。効果的に乳がん早期診断するには, 専門医不在の集団定期検診において直径5mmの乳がん組織を高い特異度で自動判定できる低価格の小型診断装置が求められます。乳房の正常組織(脂肪を多く含む)は周波数1~10GHzのマイクロ波帯において比誘電率5~30を持ちます。一方, 癌組織は高い誘電率をもち, 悪性腫瘍の比誘電率は50を超えます。乳房にマイクロ波を照射すると, 癌組織の表面や内部において反射波や散乱波を生じ, これらの波に癌組織の位置形状や電気定数の情報が含まれます。この波を受信し振幅位相を分析することによって, 乳房内部における誘電率分布図, 乳がん断層像(CT)を得ることができます。本研究では, 8~12GHz帯のマイクロ波CT法を確立して実用時間内でマイクロ波CT像を再構成し, 集団定期健診に適した乳がん早期診断システムを開発します。

大学院進学志望者や研究意欲のある学生さんは, 3年次冬の応用物理学会, 4年次秋のマイクロウェーブ展, 等で学会発表します。院生はPIERS等の国際会議で学会発表, 論文投稿(英語,査読付)をします。 卒業生進路は主に医療機器・電機・通信・情報, 等の企業です。

自然科学研究機構 核融合科学研究所(NINS/NIFS), 広島工大, 長崎大学 共同研究 (2008~)
本学入試情報サイトKan-Dai Web「研究最前線」見えない"がん"を電磁波で発見する 詳細
電気学会 A部門長賞〔平成25年度 〕「マイクロ波計算機トモグラフィー」岸本真空さん PDF